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静岡民家の会



5月例会 移築現場見学パート3

静岡民家の会 大沢ビレッジにて
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藤枝大沢地区の移築民家で5月例会がありました。
この移築民家では、今回で3回目の例会開催になります。解体現場見学、工事途中、そして、完成と移築の過程を体験しました。命を失いかけた古民家を残すには、現地での再生、または移築して再生の二つの道がありますが、いざ移築となれば数多くの条件をクリアしなければならず、その可能性は極めて低くなります。一連の見学を通して可能性と困難さの双方を理解する機会になったかと感じます。

移築する為の技術は大工の力に頼るところが大きい。
移築は解体から始まるのですが、解体するにあたっては先人の技術を理解し正しい手順をふまなければなりません。古民家といっても実に様々な骨組みがあり、建物の耐力も一様ではありません。当然、経験豊富な大工さんの判断が必要な場面が多くなります。今後、民家再生が一般化するに従いこの点が心配になります。技術を継承すべき若い大工さんが少なくなり、また伝統技術にも触れる機会が極めて少なくなっている現実があるからです。
この点では責任の一端を感じます。

移築前の調査と検証の質が移築作業や移築コストに大きく影響する。
十分な耐力がある古民家ではその耐力を落とすことなく移築、耐力不足があるとすれば、補強計画を慎重に立て進まなければなりません。先の能登での地震では、中途半端な補強は返って古民家の被害を多くするという調査結果もありました。古民家の腐りや痛み、耐力、増改築の履歴や住まわれ方等聞き取りや現地調査で十分に把握し的確な移築計画を立てなければなりません。移築計画には工事費と手持ち予算との整合性も頭に入れなければなりません。
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大沢の古民家は、昭和初期の建物です。
当然ですが石端建て(基礎石の上に直に柱を立てる)で基礎はありません。移築先では従前と同様に石端建てで復活したのですが、柱石は石からコンクリートに変わっています。又、床下は山からの絞れ水の湿気から建物を守るため、防湿コンクリートが施工されました。

移築され従前の暮らしを引き継ぐ
骨組みだけでなく建具、生活道具など多くのものは再生に一役かいます。一方、復元だけが再生ではなく骨組みのみ移築再生し、後は自分なりのテイストでリフォームされてもいいと考えます。大切なのは、その建物が持っている基本価値を失わない事だと思います。先人の知恵に敬意をはらい、使われている素材には無意味な加工を加えない。つまり古民家に接する際は、「古民家は先人と自然からの借り物」なんだと考えればいいんだと思います。

再生技術の中で補強補修技術はなくてはならない技術です。
柱や梁桁が一部痛んでいれば、切り取り、継ぎ足し、補強する。これらは古民家の工事では大事な大工技術です。万が一、解体途中でホゾを痛めてしまったとすれば、そのホゾと接合部分の補修補強も必要となります。
移築再生は大工さんを探す、出会うことから始まると言っていいのかもしれません。昭和35年頃迄はまだまだ伝統工法で家が建てられていました。その頃現役で経験豊富な大工さんと言えば50代、現在では90代になっています。今、頼るのはその次の世代の大工さんになるのです。どう出会えばいいのでしょうか。
これからは設計者、現場技術者、職人さんこの3者で力を合わせて古民家に向き合う時代です。職人さんだけに頼る時代は終わりました。
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大沢の古民家は同じ里山の中に移築されました。
600年の里の歴史を刻む大沢地区は崖崩れの危険区域に指定されています。その為この地をやむなく離れて行った方が多くなりました。その数は残っている方々より遙かに多くなりました。この地を離れる時は住まいを解体しなければなりません。残すことが許されていないのです。暮らしの記憶が残る家が消えていきます。
地域によって特徴を持つ民家が、もし移築されるとしたら、移築先は同じ気候風土を持つ地域が理想です。家は気候風土、風習の中で形が生まれたからです。風景の美しさが語られるときその屋根の形や素材の統一感も美しさを引き立てる要素だと思うのです。そんな意味からも同じ大沢に移築できて良かったとつくづく思います。

今回の一連の移築建物見学はお役にたてたでしょうか。
古民家の可能性について新たな発見がありましたでしょうか。
参加された方から「私の家が解体されてしまったことが今更に悔やまれます。」という声が多く聞こえてきました。土地、法、技術、家族、生活、資金、多くの古民家再生の課題がクリアされ、日本の誇れる住まいとして古民家が残されていく。
日本人の知恵、そして日本の暮らしの匂いが伝え残っていって欲しいと願います。

f0058623_19441035.jpg今回で3回に渡った移築現場体験の例会が幕を閉じました。
移築古民家は元のご家族の名前を頂いて「青野さんっち」と名前を付けました。
世代間のギャップがますます広がる現代社会、世代間の交流の場として「青野さんっち」はスタートします。
f0058623_19334696.jpg5月例会では敷地内のかしわの木から葉を1枚づつ取って皆さんでかしわ餅を手作りました。
かまどで蒸されたそれぞれのかしわ餅はそれぞれの日本の味です。
いかがでしたでしょうか。   ご参加ありがとうございました。
静岡民家の会 杉村喜美雄
by sizu-min | 2007-05-18 19:22 | ・例会報告
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