静岡の別荘文化を訪ねる 2011年5月22日(日)
気候温暖で、風光明媚、東京からも遠過ぎず、交通の便も割合に早くから整った静岡県内には、昭和の始め頃を中心に、別荘地が多くありました。熱海や、西園寺公望が住んでいた為に駅までできたという蒲原には、民家の会としても何回も訪問したことがありましたが、今回は御殿場を訪ねるバス旅行です。
東名御殿場 I.C. 近くの東山の地には、昭和の時代、秩父宮さまの別荘がありました。戦争拡大に反対の姿勢を表明していた宮さまは戦後、病を得、この別荘で執筆や陶芸などをなさって静かに暮らされたということです。今は御殿場財産区の一角として公園に整備され、四季の花々の美しい落ち着いた佇まい。参加の会員さんたちは、さまざまな思いでこの地に流れるゆったりとした気分を楽しんでいました。
その後、2期首相を務めた岸信介氏の晩年の住居を見学。この時代の政治家はこんな家に住むのにふさわしいような貫禄があったのだ!と実感した方も多かったのでは…。
アメリカ人の別荘も多く、この地の畜産やハム製造はその頃にアメリカ人宣教師に教わったものだということで、伝統を継承する名店にも立ち寄り、一路、三島へ。
戦後民家をスケッチしてまわった向井潤吉の絵画展が開かれている佐野美術館で、学芸員さんのレクチュアを受け鑑賞しました。戦時中に戦意高揚の絵も描いた向井が、敗戦後その心の傷みを抱えながら各地を旅しこんな絵を残していったこと、その時描かれた民家や風景は果たして今の日本にどれくらい残されているのか…いえ、殆どはもう消え去った、あたかも桃源郷のような里だった…。
静岡民家の会の活動のコンセプトを再考する良い機会となった5月の例会でした。
ky。