古民家で、日本伝統の技に触れてみよう…一閑張り
2009年 5月10日(日)
さわやかな5月の風に誘われて、民家の会例会でも芸術の風を吹かそう…という訳でもないのですが、「日本伝統の手技」に挑戦してみました。
「一閑張り」です。昭和の家庭には、屑篭とか、炭入れとか一閑張りの物がありましたね。竹篭に反古の和紙を張り重ね、その上に柿渋や漆を塗っています。丈夫さが増し、独特の風情が醸し出され、さらに墨で一筆して、アートになっているものもありました。上書きしなくても、反古紙に元もと書かれていた、例えば「大福帳」などの文字が雰囲気を出しているのですね。
静岡市北部の山里・俵峰に、民家の会スタッフの佐藤さんが所有する古民家があります。そこを、この創作会の会場に選びました。俵峰に向かう道は、実は有名な九十九折り(つづらおり)の茶園の道です。「静岡県棚田百選」にも選ばれています。新茶の季節、道の両側の段々畑ならぬ段々茶園は天に続くほど、そして光るような緑一色。家族総出の茶摘みの真っ最中でした。その景色を楽しみながら、そして本当にこんなに登ったところに家があるのかしらと不安も感じながら、俵峰の佐藤邸に到着。のどかな良い集落の、築100年程の民家です。手を入れてないように見えて実は凝って手を入れているとの佐藤さんのお話でした。
出席者は20人。講師は民家の会会員のOさんです。民家の会会員の多芸多才に感謝です。まず「一日で完成させるのは無理」とのお話。「じっくり乾かしながら作るものです」そうですよね。芸術は一日にしてならず。
Oさんの指導のもと、みんな熱心に手順をこなします。竹籠の表面をまずやすりで削って、隠し業のOS(秘密)を塗って秘密の糊を塗ってと進めるのですが、まあ、器用な方、大雑把な方、緻密な方と、普段の民家の会例会では見られない性格まで露見しますね。また、民家の会会員は骨董好きの方も多いのですが、貼る和紙用に、スタッフの松永さんが用意した大福帳の興味深かったこと。どうも藤枝付近の庄屋にあった年貢米の管理のための土地台帳らしく、思わずみんなで読みあいました。昔の人は墨の字が上手です。びりびり破くのはもったいないような気もしましたが、私たちの手によって芸術に進化させますから…(?)ということで、破かせていただきました。
自然の風で乾かすという工程も重要。薫風吹く古民家の縁側にずらっと並べて乾かします。それぞれとても個性的で、ひとつとして似通ったものはありません。この後はさらに和紙を張り重ね、持ち帰ってさらに2,3日乾かしてから柿渋を塗ることになりましたが、完成した作品も見てみたいな、と思いました。
Oさん、丁寧なご指導をありがとうございました。
日本の伝統の手技のうち、私たちでも体験できるものには挑戦して、良さを再確認し、伝統を守る姿勢を保っていきたいと思っています。
他にもこんなものがある、こんなことにも目を向けようというご意見がありましたら、是非「静岡民家の会」事務局までお寄せください。 (ky。)